1歳半頃から、子どもは言葉を使い始めます。
しかし、言葉の発達は個人差があり、言葉で自分の要求を伝えることができない子どももいます。
そんな子どもが示すコミュニケーションの欲求のひとつが、「クレーン現象」です。
この記事では、クレーン現象と自閉症との関連性や、クレーン現象がみられた時にどうしたら良いのかを紹介していきます。
クレーン現象とは、子どもが何かをしたいときに、親やほかの人の手を取って物を指したり、親やほかの人の手を使って欲求を解消しようとする動作のことです。
たとえば、お菓子がほしいときに親の手首を取ってお菓子の棚に近づけたり、ジュースがほしいときに、親の手を取ってジュースを注ぐグラスに近づけたりといった行動が当てはまります。
クレーン現象は1歳半頃から見られ始め、2歳頃から徐々に減っていくと言われています。
クレーン現象は、発達障害の子どもに見られやすい行動です。
発達障害の子どもは、言語やコミュニケーションの遅れや、社会的相互作用の困難さなどの特徴があります。
そのため、言葉で自分の要求を伝えることが苦手で、クレーン現象などの行動で要求を伝えようとすると考えられています。
ただし、発達障害がなくても言葉や指さしを覚える前に、保護者や周囲の人の手を介して物や行動を要求することがあります。
たとえばりんごが欲しい時に、「りんご」という単語を覚えていないと言葉で伝えることができません。
そのため、親や周囲の人の手を取ってりんごを指差したり、取らせたりしようとするのです。
クレーン現象があるからといってすぐに発達障害を疑う必要はありません。
自閉スペクトラム障害(ASD)とは、コミュニケーションや対人関係の障害、特定の物事への強いこだわりや反復的な行動などの特徴を示す発達障害です。
症状は人によって程度や現れ方が異なります。
また、年齢や環境によっても変化することがあります。
自閉症スペクトラム障害の診断は、発達検査や心理検査などによって行われます。
早期に発見・対応することで、適切な支援を受けながら社会生活を送ることができるようになります。
自閉スペクトラム障害(ASD)について詳しくはこちらの記事で紹介しています。
クレーン現象をするお子さまは、指差しや言葉で意思を伝えることが苦手な可能性があります。
そのため、親子で一緒にコミュニケーションの練習をすることが大切です。
以下のことに気をつけながら接してみましょう。
クレーン現象をするお子さまは、指差しの意味を理解できていない可能性があるので、まずは指差しを教えてあげましょう。
ぬいぐるみや絵本などを目の前において、指差ししながら「かわいいね」「わんわんだね」と言ってみます。
お子さまの指差しにも敏感に反応し、その指差しが何を意味しているのかを理解するようにしましょう。
お子さまに選択させる機会を増やすことも大切です。
たとえば、おもちゃや絵本を2つ用意し、「どっちがいい?」と聞いてみましょう。
お子さまが指差しや言葉で選択すれば、その意図を理解できたことになります。
指をささずに手を伸ばしただけでも、「こっちがいいのね」「選べたね」とほめてあげてください。
また、食事や着替えなど、日常生活の中で選択させる機会を増やすことも効果的です。
自分の意志で選択できるようになると、自己肯定感の向上にもつながります。
お子さまの注意を引くために、音を使って声掛けをするのも効果的です。
たとえば、クマのぬいぐるみを鳴らしながら「クマさんだね」と声をかけます。
また、音の出るおもちゃや絵本を用意するのもよいでしょう。
音を使って声掛けをすることでお子さまの注意を引きやすくなり、コミュニケーションが取りやすくなります。
お子さまの視覚を通して体験させることも大切です。
絵本を読み聞かせながら、絵を指差して「これは犬だよ」などと説明します。
実際におもちゃや食べ物を見せながら、その名前を教えましょう。
視覚を通して体験させることで、お子さまの理解を深めることができます。
お子さまがクレーン現象をするときには、何を伝えたいのかを考えてみましょう。
欲しいものやしたいことを伝えたい場合や、不満や不安を表現したい場合などがあります。
表情や声色をよく観察し、何を伝えたいのかを想像するようにしましょう。
子どもがおもちゃを落としてしまったとき、泣きながらおもちゃを抱きしめている場合は、「おもちゃが壊れちゃったね。悲しいね。」と伝えてあげます。
子どもの感情を言葉で表現することで、子どもは自分の感情を理解し、相手に伝える力を養うことができます。
コミュニケーション能力の向上には、子どもが「人と一緒に過ごすことが好き」と思えることが大切です。
そのためには、子どもと積極的に触れ合い楽しい時間を過ごしましょう。
特に体を使った遊びは、運動能力や感覚の発達につながります。
追いかけっこをしたり、ボール遊びをしたりしましょう。
クレーン現象は、言葉でうまく伝えることができない子どもが自分の意思を伝える手段のひとつです。
クレーン現象を無理にやめさせようとすると、子どもは自分の意思を伝える手段を奪われたと感じ、ストレスを感じてしまう可能性があります。
また、子どものコミュニケーション能力の発達を遅らせてしまう可能性もあります。
クレーン現象が見られたときは、まずは子どもの要求を理解し応えてあげることが大切です。
また、言葉で伝えられるようにコミュニケーションを積極的にとりましょう。
子どもが言葉で伝えられるようになると、クレーン現象は自然と消えていきます。
どうしても心配な場合は、定期健診やかかりつけ医に相談してみましょう。
1歳から3歳頃の乳幼児期にクレーン現象が見られることは珍しくありません。
クレーン現象は、お子さまがコミュニケーションをしたいと思っている証拠です。
お子さまの要求を理解して、応えてあげることでコミュニケーション能力を育むことができます。
星ノ学園ユニプレキッズでは、コミュニケーションが苦手なお子さまには見守りながら様々な声掛けを行っています。
お子様のことでお悩みがある場合は、お気軽にお問い合わせください。